🏃‍♂️「どのくらい運動すればいいんですか？」という問いへの答え

——“量”より“習慣”、がんばるより“続く”こと

「先生、運動ってやっぱりしたほうがいいですよね？」
「どのくらいやれば健康にいいんですか？」

これは、診察室でもよく受ける質問のひとつです。
そのたびに私は、こう答えます。

「はい、したほうがいいです。でも、無理して“がんばる”必要はありません。」

運動に対して、
・毎日走らなきゃいけない
・ジムに通わなきゃ意味がない
・汗をかくまでやらないと効果がない

といった「理想論」に縛られて、
かえって一歩が踏み出せない人が、とても多いのです。

本稿では、医学的な推奨運動量をベースにしつつ、
**“自然に続く運動”の価値と、それがもたらす本当の健康”**について、丁寧に解説していきます。

■ 運動は「特別なこと」ではない

まずお伝えしたいのは、
“運動＝トレーニング”という思い込みを手放してほしいということです。

健康のための運動とは、
・ランニングを毎朝30分
・ジムでのマシン筋トレ
・ヨガ教室に週3通う

といった“頑張る運動”だけを指すのではありません。

・通勤時に一駅分多く歩く
・エレベーターではなく階段を使う
・掃除や洗濯のときに意識して動く

こうした**“暮らしの中の小さな動き”こそが、最も重要な運動**なのです。

■ 医学的に推奨される運動の目安

とはいえ、ある程度の指標があるのも事実です。
以下は、WHOや厚生労働省が示す運動の基準を参考にした、健康維持のための目安です。

📊 健康のための運動指針

• 有酸素運動（ウォーキングや軽い体操）：
  　週150分以上（＝1日20〜30分）
• 筋力トレーニング（スクワット、体幹運動など）：
  　週2〜3回

これを聞いて「そんなに無理！」と思った方もいるかもしれません。
でも、1日10分の散歩を3回に分けるだけでも十分効果があります。

重要なのは、「やるぞ」と気合を入れて始めるより、「気づけばやってた」と思える運動スタイルなのです。

■ 運動が“健康”にもたらす本当の意味

運動の効果というと、
・体重が減る
・血圧が下がる
・糖尿病が改善する

といった「数字の改善」に目が向きがちですが、
それ以上に、運動が与える影響は多岐にわたります。

🧠 精神面

• セロトニンやエンドルフィンの分泌 → 気分の安定
• 不安・うつ症状の軽減
• 睡眠の質の向上

💪 身体面

• 筋力・骨密度の維持 → フレイル（虚弱）予防
• 血流改善 → 冷え性や肩こりの緩和
• 免疫力の向上

つまり、**運動とは“薬いらずの万能健康法”**とも言えるのです。

■ 「がんばる運動」は続かない

運動が続かない理由の多くは、
**「一気に理想を目指そうとして、苦しくなる」**ことにあります。

• 気温が高くて外に出たくない
• 雨でランニングができなかった
• 忙しくてジムに行く時間がない

こうした“理想とのギャップ”が重なると、
「やっぱり自分はダメだ」と自己否定に陥ってしまう。

だから私は、“習慣になること”を最優先に提案しています。

■ 医師が勧める「自然に続く運動スタイル」

以下は、実際に私が患者さんにお伝えしている“生活に溶け込む運動”の例です。

🧍‍♂️ 1. 「姿勢を正す」を1日3回意識する

デスクワーク中でも、料理中でも、
「深呼吸しながら背筋を伸ばす」だけで、腹筋・背筋が刺激されます。

🚶‍♀️ 2. 1日10分の散歩から始める

朝日を浴びながら、あるいは夜風にあたりながら。
「歩くこと」が目的でなくても、「歩きながら考える／感じる」時間にすると、自然と続きます。

🧹 3. 家事を“運動”と捉える

掃除機をかける、洗濯物を干す、キッチンで立ち作業をする——
これらはすべて立派な“身体活動”です。
姿勢や呼吸を意識するだけで、効果はさらにアップします。

📺 4. テレビを見ながら脚上げ・かかと上げ

“ながら運動”でも十分。
習慣化のポイントは、「行動とセットにする」ことです。

■ 「運動しなきゃ」より、「動ける自分に気づく」

運動を“義務”にしてしまうと、心がどこかで苦しくなります。
でも、「できたこと」に目を向ければ、自然と自信が積み重なっていきます。

• 「今日は階段を使えた」
• 「一駅分多く歩けた」
• 「肩を回すだけでも気持ちよかった」

そんな、“小さな運動”を肯定できる日々こそが、本当の意味での健康的な暮らしではないでしょうか。

■ Truvitaが考える運動との付き合い方

Truvitaは、個人主治医サービスとして、単に「運動をしなさい」と伝えるのではなく、

「どうすれば、あなたの生活に自然に運動が溶け込むか？」

を、一緒に考えます。

たとえば：

• 日常行動の中での“動きの可視化”
• 運動の心理的ハードルの整理
• 週単位の「ゆるく続く習慣設計」
• 健康数値との因果関係のフィードバック

これらを通じて、無理なく、でも確実に“動ける身体”を育てる支援をしています。

■ 最後に：動けることは、生きる力そのもの

運動とは、体重を減らすための手段でも、
数値を良くするための課題でもありません。

“毎日を快適に生きるための力”そのもの。

• 自分の足で歩けること
• 腰痛や肩こりなく動けること
• 朝の目覚めが軽くなること

こうした“当たり前のようで、当たり前でない身体”を保つには、
“日々の少しの運動”が、何よりも強い薬になります。

あなたが今日、「少しだけ動いてみよう」と思えたなら、
それがもう、最初の一歩です。

無理なく、でも確実に、
“動ける自分”を一緒に育てていきましょう。

—— Truvita